酵素

バイオフィルムを壊す酵素、その働き方

酵素は、決まった結合をひとつだけ切るタンパク質です。デキストラナーゼは歯垢の糖ののりを切り、パパインとブロメラインはタンパク質を切り、リゾチームは細菌の細胞壁を切り、グルコースオキシダーゼはブドウ糖を穏やかな消毒成分に変えます。どれも広く殺しはしません。構造を取り除くのが仕事で、だから抗菌薬ではなくバイオフィルム対策として研究されています。

酵素は細菌を殺すの? — 午前遅くの日差しの中、女性が食卓でパイナップルとパパイヤを切る

この仕組みは何か

バイオフィルムの中の細菌を守っているのは、細菌自身の丈夫さというより、まわりのものです。彼らが分泌する糖とタンパク質とDNAの基質がそれにあたります。酵素が攻めるのはその基質であって、細胞ではありません。どの酵素も、刃の形がひとつだけ決まった分子のはさみです。

デキストラナーゼはデキストランを切ります。口の中のレンサ球菌がショ糖から作り、歯垢を留めておくためのブドウ糖の鎖です。鎖を切れば、バイオフィルムは足場を失います。

パパイン(パパイヤ由来)とブロメライン(パイナップル由来)はプロテアーゼ、つまりタンパク質を切る酵素です。口の中では歯の表面のタンパク質の膜と、細菌が住みつく汚れをゆるめ、腸では単に食事のタンパク質の消化を助けます。

リゾチームは体自身の酵素で、唾液と涙に豊富にあります。グラム陽性菌のペプチドグリカンの壁を切り、壁を失った細胞は破裂します。

グルコースオキシダーゼはブドウ糖と酸素をグルコン酸と過酸化水素に変えます。小さく局所的な消毒成分で、口の中のペルオキシダーゼの仕組みを助けます。

イラスト:折りたたまれた酵素タンパク質が溝に糖の鎖を抱え、珊瑚色に示された結合をひとつ切る。暖かい逆光の中で

だれもが聞く三つの質問

酵素は細菌を殺しますか。 おおむね殺しません。リゾチームは一部の菌種を殺します。ほかの酵素は細菌が隠れている構造を取り除き、唾液や歯みがきや免疫が仕事を仕上げられるようにします。

安全ですか。 タンパク質なので、体が消化します。パパインとブロメラインは、その果物に敏感な人にアレルギーを起こすことがあります。濃度と接触時間が効き方を決め、そのどちらも研究ごとにばらつきます。

歯みがきの代わりになりますか。 なりません。酵素は基質をやわらげるだけです。歯から歯垢を落とすのは、いまも物理的な除去です。

科学に言えること、まだ言えないこと

イラスト:糖の鎖の網に捕らえられた球菌の連なり。酵素タンパク質がライム色の点で鎖を切り、放たれた細菌は形を保ったまま漂い出す

言えること。デキストランは歯垢の構造ののりであり、デキストラナーゼは実験室でそれを分解します。プロテアーゼとリゾチームは試験管内でバイオフィルムを弱めます。グルコースオキシダーゼは局所で過酸化水素を作ります。

まだ言えないこと。人の口の中で、どの酵素が何か月かけてどれだけのバイオフィルムを取り除くのか、どの組み合わせが最良なのか、酵素を使うことでむし歯や歯周病の結果が変わるのか。臨床の結果を見た長期の人での試験が足りていません。

ここで名前の出た菌種については細菌事典を、今月何が変わったかはニュース一覧をご覧ください。